close

インタビュー

推し活を楽しむ心がまえとは?

忽那賢志先生

推し活を“安心・安全”に
楽しむために必要な心がまえとは?
感染症専門医、忽那賢志先生に
聞きました。

“生歌”に優るものはない

  • 僕は学生時代にビートルズをきっかけに洋楽にハマり、その後はサブカル系の音楽を楽しんできました。私の推しはサニーデイ・サービスの曽我部恵一さんや前野健太さんで、ライブにもよく足を運んでいたんです。
  • ところがコロナのせいで、この2年はそうした機会が失われました。無観客でのライブ配信を見ましたが、そこで実感したのは、生で聞くからこそ感じられる“リアリティ”があったんだ、ということ。また、アーティストと観客が一体となって盛り上がる、あの空気感はライブでしか味わえません。配信には配信の良さ、たとえば繰り返し見られるという利点がありますが、やはり“生”に優るものはありませんね。
  • 先頃緊急事態宣言が解除されてからは、イベント関連の規制が緩和され、スポーツの試合や音楽ライブも有観客で開催されるようになってきました。まだ「元通り」とはいえない状況ですが、現場ならではの臨場感を味わえる機会が少しずつ戻ってきていることを嬉しく思っています。

条件付きで声援の解禁も

  • 第6波では、国内の新規感染者数と死者数は過去最高となってしまいました。
  • しかし、亡くなる人の割合で言えば0.2%未満にまで下がりました。これは第一波の時の1/10以下の数字です。
  • 一人一人にとっての脅威では徐々になくなってきていることは間違いありません。
  • 流行が落ち着いていて感染リスクが低くなっているときには、ライブ・コンサートなどの社会経済活動は許容されるべきでしょう。
  • とはいえ、「ワクチンを打った人が多いから、何をやっても大丈夫」というわけではありません。大勢の人がひしめき、大声を出すようなことがあれば、飛沫による感染が広がります。実際、ワクチンの接種率が高いヨーロッパでも、サッカースタジアムなどで多くの感染者を出していますから、やはり今はまだマスクの着用を徹底し、観客同士の距離も十分に取るべきですね。こうした対策をとった上で、会場がオープンエアなら、僕は声援を送ってもまず問題ないと思っています。フェスなどで盛り上がった時にやりがちな、体をぶつけ合うモッシュは危険なのでやめましょう。

周りにうつさないことが大事

  • 観客側の心構えとしては、“自分が感染源にならない”ようにすることが何より大事。改めてお願いしますが、些細な症状でも自覚がある場合には、出かけないでほしいと思います。また、大規模で混雑するイベントほど感染リスクが上がるので、まずは小・中規模で、他人との距離を保ちやすい会場を選んで行くとよいでしょう。事前に会場の収容人数や感染症予防対策について調べたり、混雑する場所や時間帯を避けるべく予定を立てたりすると、なお安心です。

“ゼロリスク”にこだわるのではなく、知見を蓄積していく

  • 重症化や死亡のリスクが減ってきた今、第一波の時と同じ対策を取り続けるのも、“ゼロリスク”を追求するのも無理があります。とはいえ、一気に「元通り」というわけではなく、徐々に規制を緩めていくべきでしょう。ではどこまで緩めるべきか。イベント後の追跡調査で正確な感染者数を把握・分析するなどして、「ここまでは大丈夫」というラインを決めていけたらいいですね。科学的知見を蓄積し、少しずつカタチにしていくことが大事だと思います。

※2022年3月時点の情報を掲載しています。

「臨場感と高揚感を楽しむのがライブの醍醐味。羽目を外したくなる気持ちもわかりますが、今は我慢を」

(プロフィール)
忽那賢志(くつな さとし)

大阪大学大学院医学系研究科教授(感染制御学)

山口大学医学部卒業後、大学病院勤務を経て、2012年より国立国際医療研究センター 国際感染症センターに勤務。2021年7月より現職。振興感染症、輸入感染症などが専門とするが、現在は特に新型コロナウイルス感染症の臨床・研究に尽力。一般への啓蒙活動も行う。

※写真はすべてイメージです。

close